東北地方の漁港復旧を目指して

希望の烽火(のろし)プロジェクト(東京都千代田区)

東日本大震災で甚大な被害を受けた東北地方の漁業関係者たち。
絶望にうちひしがれた彼らに生きる望みを持たせるには、漁の再開が必要だった。
その舞台の再構築を目指したのが「希望の烽火(のろし)」プロジェクト(東京都千代田区)だ。
■被災漁港に速やかな支援を

東日本大震災によって東北地方は未曾有の被害を受けた。中でも、三陸地方の漁業は被害が顕著で、岩手・宮城・福島の3県で263の漁港が被災し、被害総額は1000億円を超えたほどである。
 この窮状を受けて、いち早く漁港の復旧に努めた一団があった。元外交官で、現在は実業家・外交評論家として知られる岡本アソシエイツ代表の岡本行夫氏。同氏が組織した「希望の烽火(のろし)」プロジェクトチームだ。


000004184_FMTgoTGFsD.jpg チームの狙い、それは被災漁港に向けた資機材および資金の提供による魚市場機能の早期回復だ。岡本氏は国や民間企業に対し、魚の水揚げができない漁港の復旧に最低限必要な諸設備の無償提供を呼びかけたのだ。
 このプロジェクトの下、非営利の社団法人として組織されたのが「東北漁業再開支援基金 希望の烽火」(以下、希望の烽火基金)だ。基金の事務局長を務める宮家邦彦氏は「被災地では、漁港の運営に最低限必要な冷凍施設や事務機器まで、津波ですべて失っている。これら設備を早急に届けることが復旧の第一歩になる」と語る。
 そのために同基金では、プロジェクトの趣旨に賛同する企業から、漁業復旧に必要なコンテナや資金・資材の供出を受ける。この好意に対して希望の烽火基金では、賛同企業の社会的な貢献を各種メディアに宣伝することで応える。
 また、資金を使って、水揚げされた魚の保管に必要な冷凍コンテナを購入したり、各社から供出された設備を管理。それらを被災した市町に提供する形で、漁港まで届く仕組みを構築した。

■若い漁師たちの絶望の顔
 岡本氏の仲間としてプロジェクト発足の経緯を知る宮家氏は、こう振り返る。「震災後、現地を巡った岡本が目にしたのは、壊滅した漁港だった。若い漁師たちさえもが絶望する姿に、感じるものがあったのだろう」漁港には冷凍・加工施設があり、そこに漁船が集まるから魚市場が成り立つ。しかし、震災でその機能が失われると、漁船は獲った魚を水揚げできず、遠くても別の漁港で水揚げするだろう。漁船がこないことは、漁港としての死を意味するのだ。
震災で、港は壊滅的なダメージを受けたが、素早い支援が功を奏した。

000004185_ELOZFxvRdF.jpg 魚には種類によって、漁をするのに適した漁期がある。その魚の漁期に水揚げできなければ、旬を逃してしまう。三陸地方では8月のサンマ漁がその最たる例だ。漁港の存在価値が問われる漁なのだ。だが逆をいえば、たとえ規模は小さくてもサンマ漁を維持できれば、漁港を守れるということだ。「だからこそ漁港機能の回復を速やかに行なう必要があった」(宮家氏)。希望の烽火プロジェクトの狙いは、漁業の灯火を絶やさないことにあるのだ。


■湾岸戦争で得た復旧のヒント

 国の支援を待たない迅速さが、希望の烽火プロジェクトのテーマだ。この発想の源は、岡本・宮家両氏の外交官時代にあった。というのも、1990年の湾岸戦争時に、日本が行った支援の経験があったからだ。
 当時、日本では、自衛隊を現地へ派遣する代わりに、米軍に物資の支援をすることが決まった。この支援計画を担当したのが、両氏だった。
「希望の烽火」プロジェクトの宮家邦彦事務局長。「東北の漁業を絶やさないため、官民一体の支援をする必要がある」と語る


000004186_CvN8wpY06o.jpg 両氏が一番に考えたのは、現地の米軍が最も欲しがっているものを提供することだった。当初は水や食料の提供を考えたが、そういった物資は他からも提供がある。最終的にたどり着いたのは、輸送に適した4WD車だった。これさえあれば、米軍自身が必要なものを調達するために、砂漠を移動できるようになるだろう。
 両氏は官民協力を唱えてメーカーを説得。必要な場所にピンポイントで車両を手配することに成功した。米軍の兵士たちから高い評価を得た。支援の成否は、物資を必要とする場所への迅速な対応がカギになることを知ったのだ。

■復興よりも先に〝復旧〟を
 宮家氏は語る。「今回も岡本は企業のトップに直接アプローチをかけて、目指す成果を導き出した。もし実直に稟議を待っていたら、未だに誰も行動していなかった」。
 宮家氏によれば、岡本氏の発想はある一点で共通しているという。「実際に支援を受ける人たちの生活を想定していない支援では、意味がない」ということだ。
 被災者の思いは、復興よりも前に、生活を原点に戻す〝復旧〟にある。「希望の烽火」プロジェクトは、政府による支援を補って、最短で東北の漁業の復旧を目指した。だからこそ、漁師たちに生きる望みを与えられたのだ。
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